医療業界において2018年は大きな変換点といえるかもしれません。
というのは新しい医療広告ガイドラインが2018年6月より施行され、従来はテレビコマーシャル、チラシ、看板などがその対象とされていた「広告」という扱いの中にホームページも含まれるようになったからです。
違反していた場合、行政指導→報告命令または立ち入り検査→中止命令または是正命令→告発→行政処分 という処罰が下される恐れがあります。
よほど悪質でない限り何も報告がないまま業務停止などの行政処分がいきなり下ることはないと思うのでむやみに恐れる必要もないですが、改めてポイントを見直す必要はあります。
施行より2年ほどが経ち今まで連絡が無いから大丈夫と構えていてもいきなり連絡が来て慌てることがないようにする必要があります。
どのような指導がくる?
下記のような通知がくることがあります。
こちらはまだ行政指導というわけではないのでひとまず安心して下さい。
ただ、通知問い合わせ先となっている「デロイト トーマツ コンサルティング 合同会社」というところは単に営業目的や怪しい所ではなく厚労省の委託機関としてサイバーパトロール(今回の件では医療広告ガイドラインに抵触する部分がないかの監視)している機関なので無視や放置をしてしまうと都道府県への情報提供→指導という流れにのってしまうので注意が必要です。
通知到着後1か月とあるのでできる限り早く対処できるようにしましょう。
(改正)医療広告ガイドラインとは?ホームページも広告?
従来医療に関する広告は、
・人の生命・身体に関わるサービスであり、不当な広告により受け手側が誘引され、不適当なサービスを受けた場合の被害は、他の分野に比べ著しいこと。
・専門性の高いサービスであり、広告の受け手はその文言から提供される実際のサービスの質について事前に判断することが非常に困難であること。
という観点などから制限や規制がかかっていました。
「広告」と聞くと一番イメージするのがテレビコマーシャルやチラシかもしれません。従来は一般利用者の情報取得手段が限られていたのでそれらが対象となっていましたが、昨今規模の大小限らず小さな病院でもホームページを持つことが当たり前になっており一般利用者もGoogleやYahooで事前に色々と情報を検索して来院することが多くなりました。
ところがホームページは医療広告ガイドラインの対象外ということで規制が外れていました。
(厳密にはホームページ内ならなんでもOKではなく、現実的には患者や消費者に医療機関選択に大きな影響を与えていることと、広告の範疇に入ると考えられるホームページもありうるというグレーゾーン扱い)
その影響で特に美容外科などで過剰な広告が元となりトラブル事例(ホームページと異なる費用や効果などトラブル等)が散見されるようになりました。
例えば、治療前治療後のビフォーアフターの写真などは視覚的にも分かりやすいですが、そこに画像修正が加わり事実と異なる状態を表示させると当然ながら虚偽や誇大になってしまいます。
また画像修正などをしないでも治療の成果は個々人によって異なるため、100%治ると言及したり、説明もないビフォーアフターだけの画像を載せたり、患者の体験談を載せるということは誤認させるものとしてガイドラインとしては禁止されています。
このような状況から利用者保護の観点で医療法の改正という流れになり、ホームページも広告と定め、ホームページでの虚偽又は誇大等の表示を禁止し是正命令や罰則等の対象とすることになりました。
ホームページ上にそういった写真やページを設けているということは多いのではないでしょうか。その場合は修正や削除が求められます。(ホームページだけでなくブログやSNSも対象)
但し、なんでもかんでもダメというわけではなく広告の要件や限定解除という手段があります。
広告の定義
①と②両方を満たす場合広告に該当する
① 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
② 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)
限定解除要件
限定解除というと車でAT (オートマチック) 車にしかのれないAT限定免許をもっている方がMT (マニュアル) 車も乗れるようにするため試験を受け条件をクリアして限定を解除(無くす)ことがよく知られていますが、医療広告ガイドラインにも条件をクリアすることにより広告が可能になる限定解除要件が定められています。
というのはなんでもかんでも規制してしまうと患者が自ら求める情報が届かなくなってしまい、それはそれで不利益だからです。
ポイントとしては下記を満たすことが必要になります。
■電話番号、メールアドレス等の連絡先を分かりやすく掲載する
■一般利用者が能動的に情報を得ようとしたホームページや資料請求のパンフなどは限定解除の対象だが、受動的な折込チラシや、外部要因が絡むリスティング広告やバナー広告は限定解除の対象外。
■必要最低限の情報金額ではなく、最低金額から可能性の高いオプションも含めた最高金額や治療内容、主なリスクや副作用など詳細を分かりやすく示す。
限定解除要件原文としては下記です。
広告可能事項の限定解除が認められる場合は、以下の①~④のいずれも満たした場合とする。
ただし、③及び④については自由診療について情報を提供する場合に限る。
① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
①は、ウェブサイトのように、患者等が自ら求めた情報を表示するものであって、これまで認知性(一般人が認知できる状態にあること)がないために医療広告の規制の対象とされていなかったウェブサイトの他、メルマガ、患者の求めに応じて送付するパンフレット等が該当しうるものであること。
なお、インターネット上のバナー広告、あるいは検索サイト上で、例えば「癌治療」を検索文字として検索した際に、スポンサーとして表示されるものや検索サイトの運営会社に対して費用を支払うことによって意図的に検索結果として上位に表示される状態にしたものなどは、①を満たさないものであること。
②は、表示される情報の内容について、問い合わせ先が記載されていること等により、容易に照会が可能であり、それにより患者と医療機関等との情報の非対称性が軽減されるよう担保されている場合を指す。
なお、問い合わせ先とは、電話番号、E メールアドレス等をいう。
③は、自由診療は保険診療として実施されるものとは異なり、その内容や費用が医療機関ごとに大きく異なり得るため、その内容を明確化し、料金等に関するトラブルを防止する観点から、当該医療機関で実施している治療等を紹介する場合には、治療等の名称や最低限の治療内容・費用だけを紹介することにより国民や患者を誤認させ不当に誘引すべきではなく、通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間及び回数を掲載し、国民や患者に対して適切かつ十分な情報を分かりやすく提供すること。標準的な費用が明確でない場合には、通常必要とされる治療の最低金額から最高金額(発生頻度の高い追加費用を含む。)までの範囲を示すなどして可能な限り分かりやすく示すこと。
また、当該情報の掲載場所については、患者等にとって分かりやすいよう十分に配慮し、例えば、リンクを張った先のページへ掲載したり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載したりといった形式を採用しないこと。
④は、自由診療に関しては、その利点や長所のみが強調され、その主なリスク等についての情報が乏しい場合には、当該医療機関を受診する者が適切な選択を行えないおそれがあるため、利点等のみを強調することにより、国民・患者を誤認させ不当に誘引すべきではなく、国民や患者による医療の適切な選択を支援する観点から、その主なリスクや副作用などの情報に関しても分かりやすく掲載し、国民や患者に対して適切かつ十分な情報を提供すること。
また、当該情報の掲載場所については、患者等にとって分かりやすいよう十分に配慮し、例えば、リンクを張った先のページへ掲載したり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載したりといった形式を採用しないこと。
ホームページNGセルフチェックポイント
個別の解釈や限定解除は色々ありますが、全般的には
「虚偽広告、比較優良広告、誇大広告、公序良俗に反する内容の広告、品位を損ねる広告、患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談、治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真」等に該当しないかをまずはチェックする必要があります。
該当箇所がある場合はホームページを修正していきましょう。
なお、本記事は医療広告ガイドライン等を元に記載したものではありますが情報の正確性を担保するものではなく解釈も各々の事情により分かれるところなので担当機関に確認し判断して下さい。
その他具体例
・まずは限定解除要件に対応できているかどうか
→限定解除できれば表現の幅が広がるので対応しましょう。
・〇〇専門外来、〇〇専門医
→但し、糖尿病、花粉症、乳腺検査は可能など例外あり
・治療効果の表現(絶対安全、無痛治療、痛みがない、1日で治る等)
→全てにおいて絶対の治療はない。また治療後の定期的な処置が必要な場合は虚偽広告として扱われる
・お客様満足度〇%
→データ根拠がないものや限定的、意図的に誘導された調査は虚偽広告
・ビフォーアフター写真
→加工や撮影条件が異なる場合は虚偽広告
→※限定解除可能。通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付した場合は可能。
・最新、最高、日本一といった比較優良表現
・芸能人の〇〇も体験、芸能人の〇〇も推薦
→他の医療機関より著しく優れているとの誤認を与え不当に誘引するおそれがあることから、比較優良広告にあたる
・「〇〇で紹介されました」テレビ雑誌等のメディア掲載実績
→比較優良広告にあたる
・誇大広告、比較優良広告にあたるホームページURLやメールアドレス
→例、gannkieru.com(ガン消える)、no1hospital@〇〇.com等(NO1ホスピタル)
・自由診療で1か所〇〇円!
→条件付きの料金(5か所以上の場合等)の場合で注釈があっても見落とすと判断される場合は誇大広告にあたる
・プチ矯正、ブライダル矯正、スピード矯正等
→事実を不当に誇張した表現や、誤認させるおそれがある表現は、誇大広告に該当する可能性があり
・専門家の談話の引用
→誤認を与える恐れがあり不可
・患者様の声や体験談
→主観的な感想は誤認を与えるとして認められない。なお、誘因性が認められない患者個人のサイトやSNS、利益関係のない第三者口コミサイトは広告に該当しないので可能。
・病人が回復して元気になる姿のイラスト
→誤認を与える誇大広告
・キャンペーン、今だけ〇%オフ、今なら〇〇をプレゼント
→価格を強調し品位を損ねる、直接関係ない情報で不当に誘因
・無料相談
→無料で健康相談等実施している旨は広告可能だが、品位を損ねる費用の強調や不当に誤認させ誘引する広告は不可なので注意が必要
・未承認医薬品、医療機器を用いた治療についての記載
→広告は認められない
→※限定解除可能(・未承認であること、・「個人輸入」など入手経路、・国内の承認情報の明示)
・死亡率、術後生存率についての記載
→広告は認められない
・症例数〇〇例の実績
→※限定解除可能。客観的実証が必要
・略歴、講習会の受講歴等
→限定解除で可能
・個別の装置、治療法、材料等の名称表記
→限定解除で可能
「審美治療」「再生医療」「適応外使用」の表記
→限定解除で可能
医療広告ガイドラインに伴うホームページ修正ご相談下さい
昔ホームページを作ったままで放置している、制作業者と連絡がとれなくなった等、医療広告ガイドラインに伴うホームページ修正でお困りのことありましたらご相談下さい。
なお法律は変更されることもありますし、グレーゾーンというか事例や解釈によっても異なることがあるので変更内容に関してはご自身で担当機関に確認下さい。
本記事は医療広告ガイドライン等を元に記載したものではありますが情報の正確性を担保するものではありません。
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