eラーニングの導入

2020年4月8日

新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっている中、注目を浴びている言葉があります。それはLMS(学習管理システム:Learning Management System)です。
といってもLMSは一般的でないのでそれを利用したeラーニングという言葉でしたら耳にしたことがあると思います。
eラーニングとはインターネットを活用した学習の方法全般になります。
具体的な事例としては企業の社内研修用に用いたり、一般ユーザー向けにスキルアップの資格講座の配信があったりと形態は様々です。
以前はDVDなどに情報を記録してそれを再生するやり方でしたがネット環境やスマホ環境、LMSが発達したことによりウェブサイトにログインするだけで手軽に利用できるようになりました。
人が集まる集合研修やセミナー講座という形がとりにくくなった今、自宅でも安全に活用できるeラーニングは注目されています。
導入にあたっては有料、無料、サービス内容も様々なのでご検討されていましたら一度ご相談下さい。

eラーニングのメリット、デメリット

どんなに優れたサービスでもデメリットというものも存在します。企業の状況によっても異なるとは思いますが、主なeラーニングのメリット、デメリットをまとめてみます。
立場によっても異なるので講師(運営)側と受講者側でのご紹介です。

eラーニングのメリット

講師(運営)側
・会場の準備をする必要がなく人数制限なども基本的には必要ない
・資料の印刷をする必要がない
・関わる人員(講師、受付、誘導、警備、事務等)のスケジュール調整をする必要がない
・教材として準備したコンテンツはストックになり次回以降も利用できる
・受講生の学習状況の把握やテストなどの処理も自動でできる
受講者側
・LIVE講義以外は時間、場所に関係なく受講できる。移動中、外出先でも。
・人と接触することがないので新型コロナウイルス等の感染症にかかるリスクがない
・何度も繰り返し受講でき習熟度を高めることができる
・集合講義よりも参加費が安い

講師(運営)側にとっては会場、印刷物、人員の準備などで従来かかっていた経費を削減することができます。
受講者側も移動の交通費や時間の節約ができ、今の情勢では一番大切な不特定多数の人と接することによる感染症のリスクを失くすことができます。

eラーニングのデメリット

講師(運営)側
・初めての場合はシステムの選定から教材の準備、運用方法など仕組み作りが必要
・LMSによっては初期費用や月額費用が必要
・動画撮影など教材準備が必要
・動画やPDFテキストなど情報の複製や流出のリスク
・実地の作業が必要な研修等には向かない
・一方的な発信になってしまい現場の空気感を感じられない
受講者側
・モチベーションを自分から高めないといけない
・講義をきっかけとした受講者同士のコミュニティの構築や気軽な質問がし辛い
・高速で安定したネット、PC環境が必要
・書きこみができず資料のプリントアウトが必要なら自分でしないといけない

講師(運営)側にとってはeラーニング導入によって従来の経費節減というメリットがある反面、新たな仕組みづくりをするための経費がかかってくるので費用対効果を判断する必要があります。
またデジタルコンテンツの特徴として複製や流出のリスクは常にあるということを認識することは必要です。例として講義に使用していた動画データをYoutubeの共有や埋め込みなどから第三者に二次利用されてしまい本来得るはずだった利益を獲得できないことが考えられます。システム上埋め込みや共有できない仕組みを構築してもパソコンの外から動画を録画されてはどうしようもありません。そういったリスクがあることを認識した上で規約やルールで対処する必要があります。
受講者側にとっても実際の現場に足を運び講義を受けるというLIVE感が無くなるので、受講者同士の新たな人間関係の構築の機会は無くなり、継続的な講義などの場合は自分の参加モチベーションを高める必要があります。

Eラーニングに向いている業種サービス

メリットやデメリットを比較検討して導入をお考えされている企業も多いと思います。企業の事業形態や細かいサービス内容、従業員規模などにより異なるので一概に向いている業種や向いていない業種というのは言えませんが、主に向いている業種をいくつかご紹介致します。

税理士、社労士、司法書士等の士業

企業経営に深く関わる士業ではクライアントへのコンサルティングをサービスの一つにしている場合もありますが、対面でのコンサルの場合は対応範囲に限界があり、個々の担当者の力量に左右されることにもなります。
eラーニングを利用してクライアントへの知識提供ツールとして使用すれば今までとは違ったビジネスチャンスが生まれます。
また社内研修においても法令なども頻繁に変わるのでアナログな体制で教材を印刷などしていたら一つ一つ元のファイルを探して修正して印刷してと都度修正の手間が大変ですが、eラーニングの仕組みを一度導入すれば情報を集約してデジタル上で修正もできるので運営コストを削減できます。

人材派遣業

人材派遣業において基礎研修やスキルアップ研修などは欠かせないものですが、昨今の情勢から今後集合研修は難しくなると考えられます。その際にeラーニングの仕組みを導入することで利用者にリスクを与えることなく知識の蓄積を促すことができエンドユーザーである企業の評価も高めることができます。
また、今年4月から施行された「同一労働同一賃金」により従来より支出が増えた場合でも研修費用の削減効果によりマイナスの影響を抑えることができます。

協会や団体の資格業

法律で定められている弁護士、司法書士といった国家資格。簿記や准看護師といった官庁や大臣が認定する公的資格。
上記以外にも団体や協会が独自で設定し試験をする民間資格も数多くあります。メジャーな資格からマイナーな資格まで幅広いですが、eラーニングを利用することにより全国どこの利用者にも知識の習熟や資格試験の機会を与えることができます。
認知度を広めると共に受験ハードルを下げることで新たな受験者を得ることができます。

eラーニングの導入事例

ここまでのご紹介でeラーニングの概要的なことは分かったけど実際に導入するとどうなるのか、イメージが沸かない方も多いかと思いますので弊社のクライアントから実際の導入事例や流れ、その際に出てきた課題などをご紹介します。

eラーニングの導入事例概要

・ワードプレスでホームページ制作
・サーバーはさくらインターネットスタンダードプラン。SSL対応
(初期1048円、月額524円※税込み)
・カラミーショップエコノミープランのASP型カート導入
(初期3000円、月額834円※年間契約税抜き)
・クレジット決済システムはGMOイプシロン
(5ブランド利用月額3500円)
・eラーニングシステムはASP型のLearn0(ラーノ)
(初期0円、月額9800円※ユーザー100名まで税抜き)

eラーニングの導入流れ

今回のプロジェクトはその目的としては社内の研修用でのeラーニングではなく、社外、一般ユーザー向けに有料のE-ラーニング講座を配信する目的でスタートしました。
有料の講座ということなので受講者を集め、そこに対して配信する必要があります。
企業としてのウェブサイトもない状態だったのでまずはサービス内容を届け信頼性を上げるためにもウェブサイト制作からスタートしました。
クライアント側で簡単にお知らせの投稿や管理ができるようにCMSにワードプレスを利用しました。
サーバーを検討する際にはサービスの購入という作業も絡みますし、今の検索エンジンの情勢からSSL(暗号化通信)対応は必須ということでコストパフォーマンスが良いさくらインターネットのスタンダードプランをサーバーには利用しました。
受講者の募集に関しては、ウェブサイトに申し込みフォームを設置してそこからやり取りをして銀行振込等の案内を送るという方法も考えられましたが、できるだけ手間による機会損失を失くすという考えから、ASP型のショッピングカートシステム、カラーミーショップを導入してクレジットカードで直接購入して頂けるようにしました。
ASP型ではなくEC-CUBEでオリジナルの構築も検討しましたが工期とコストの面で見送りました。
カートシステムのテンプレートデザインを利用してショッピングサイト全体を構築することもできますが、今回はオリジナルデザインのウェブサイトにカードボタンを組み込むだけで対応しました。
この場合、購入画面は独自ドメインのURLでなく、カラミーショップのURL(〇〇.shop-pro.jp)を使用することになります。
よくカートシステムを導入したら=クレジットカードが利用できると思われがちですが、実際には決済システムは別のサービスになるので個別の申請が必要になります。今回は決済サービスにカラミーショップ推奨のGMOイプシロンを利用しました。
受講者の利用の流れとしては

  1. ウェブサイトに訪問
  2. 講座詳細ページを閲覧
  3. 購入ボタンをクリック
  4. カートページに遷移してクレジット情報等必要情報を入力
  5. 購入
  6. eラーニング用サイトのログイン情報が個別で送られてくる

という流れになります。
購入によって何かデジタルコンテンツがダウンロードされるのではなく、購入確認がとれたらeラーニング用サイトにアクセスする為のログイン情報などを連絡する形をとりました。
eラーニングのシステム、いわゆるLMS(学習管理システム:Learning Management System)にはユーザー数に応じて定額制でコストパフォーマンスの良いLearn0(ラーノ)を利用しました。YoutubeやVimeoなどの共有コードを埋め込むことで動画配信ができ、テキスト配信やテスト機能、アンケート機能など必要なことが揃っているサービスです。但しASPでLearn0(ラーノ)側のプラットフォームを利用するのでURLは企業ウェブサイトとは異なります。(〇〇.learno.jp)

eラーニング導入の課題

一連の導入の過程で課題になったこともいくつかありました。本題であるeラーニングに絡まないこともありますが、ご紹介します。

■ASP型のサービスだと基本的にはサービス提供側のドメイン(URL)を使用することになり独自ドメインが利用できない。

eラーニングを利用するには主に3種類の方法があります。一つは今回利用したASP型サービス。それ以外にパッケージ型やオリジナル構築型があります。
前者のASP型とは、eラーニングのシステムを提供する業者のプラットフォーム上でサービスを利用すること。
後者は自社のサーバーなどにシステムをインストールしたり、独自でシステムを構築していく内容になります。
住宅で例えるならASP型は家具付きの賃貸を借りること、後者は持ち家に市販の家具を設置して利用する、もしくはオーダーメイドでオリジナルの家具を作成して利用することになります。
ASP型の方がコストを抑えることができ、導入期間も短縮できますがその分オリジナルに比べて自由度がありません。
Learn0(ラーノ)の場合もURLの部分が〇〇.learno.jpという形でホスト名の〇〇部分にしか独自の名称を入れることができず独自ドメインの利用はできませんでした。
特に気にされないのであれば問題ありませんが、URLから他社のサービスを利用しているということが分かってしまうため、そういう目で利用者から見られたくないとお考えであればASP型以外の検討をした方がいいかもしれません。ただ、サービスによってはオプションで独自ドメインを利用できるものもあります。
またASP型のカラミーショップも購入ボタンをオリジナルデザインのウェブサイトに埋め込んだので購入までは独自ドメインで遷移しますが、購入ボタンを押した後の流れはカートのドメインに依存します。(https://〇〇.shop-pro.jp/)
ホスト名だけを変更させるサービス(イージーマイショップ等)もありますがURLを変更せずに最後まで購入させるのであればEC-Cubeなどを利用してシステム構築する必要があります。

■ASP型のサービスだとデザインや文言のカスタマイズ性がない

今回オリジナルデザインのサイトに購入ボタンを設置してそこにスクリプトを埋め込み、カート画面へ遷移させる方法をとりましたが、購入タンを押して個人情報やクレジットを入力し実際に購入完了するまでの画面部分はカスタマイズできません。カラミーショップの場合ショップ会員登録などショップ機能に特化したサービスが予めあることがメリットですが、ショップというイメージを出したくない場合はカスタマイズできないことがデメリットになってしまいます。
但し、カート以外のページの一部はHTML、CSSの編集も可能です。

■クレジットの申請許可が大変

カートシステムの導入と決済システムの導入は別になります。クレジットカードを利用できるようにするには決済会社の審査が必要ですが近年審査も厳しくなっておりサービス内容によっては簡単に通らないので事前準備と期間が必要です。

■安価なサービスを使用していると思われることによる信頼性への不安

カート購入時にはURL部分が変更されたり、カート内のデザインなどで詳しい人にはどういったショップシステムを利用しているというのが分かってしまいます。
今回利用したカラーミーショップの場合は手軽に安く誰でも利用できるというイメージがあるので、そのサービスを利用していることにより信頼性が損なわれると考えるのであれば別のシステムを検討する必要があります。

■動画配信にYoutube等の埋め込みサービスを使用するのかMP4をアップロードするのか

Youtube等の埋め込み動画の場合サーバー負担を考えることなく手軽に利用できます。その反面Youtubeを利用していることはすぐ分かってしまい、対策を施さなければコンテンツが外部に流出し第三者に二次利用されてしまう危険性はあります。関連動画として全く関係ない他社の動画が紹介されたりするのも気になるところです。
MP4をアップロードすることもプランによっては可能でYoutube利用時のデメリットは無くなりますが、サービスによっては動画容量や閲覧容量によって料金体系が変動することもあるのでコストとリスク、パフォーマンスのバランスを考える必要があります。

■購入のきっかけアンケートを取るにはLMSの機能を利用するのが便利

プロモーションを展開する上で実際の利用者からサービスを知ったきっかけを聞くことは大きなヒントになります。LMSにはテスト機能以外にもアンケート機能なども備わっていることが多いのでそちらを利用すると自動的にグラフが生成されたりなど便利に活用できます。

■android端末のスマートフォンでは明朝体が表示できない

ウェブサイトを制作する上でスマートフォンでの見え方も重要ですが、パソコンで閲覧した時に明朝体になっていてもスマートフォンから閲覧するとゴシック系に置き換わることがあります。一般的なandroid端末に明朝体フォントがインストールされていないことが原因なのですが、どうしても明朝体を表示させたい場合はウェブフォントを利用する必要があります。

■社内体制(窓口)を一本化することが重要

eラーニングに限りませんが大きなプロジェクトになればなるほど関わる人は増えていきます。eラーニングの場合、外部の制作業者とのやり取りも必要になってきます。その場合でも社内を取りまとめるリーダーを1人決めてその窓口を通してやり取りをする、もしくは複数の担当を設けるのであれば役割分担をした上で担当者間で情報共有を密にすることが重要です。
そうしないと指示が二転三転してしまい後戻り工程が発生しスケジュールやコストに影響が出てしまいます。

eラーニングの導入をお考えの方は是非ご相談下さい

eラーニングのシステム、LMSには今回事例でご紹介したLearn0(ラーノ)以外にもMoodle(ムードル)やeden LMS等、多種多様なサービスがあります。
またその前段階としてのカートシステムもカラミーショップや、ワードプレスのプラグインであるWooCommerce(ウーコマース)を利用する方法、サイト全体をECCUBEで構築する方法などがあります。
納期やご予算、目的などによって最適な方法は異なりますのでウェブサイト制作やカートシステム、eラーニングの導入をご検討されていましたらご相談下さい。
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