インターネット広告の種類
現在、動画広告、フローティングバナー(リッチ)広告、ディスプレイバナー広告、アフィリエイト広告、
検索連動型広告、行動ターゲティング広告等々色々な種類のインターネット広告がありますが、その中でタイプ別に分類すると下記4分類があります。
ブランディング型、リーチ型、レスポンス型、セグメント型。
これらはそれぞれが独立しているというよりも複数タイプにまたがっている場合が多いです。
主に属しているタイプ別の広告の種類からいうと、
ブランディング型:動画広告、フローティングバナー(リッチ)広告
リーチ型:ディスプレイバナー広告
レスポンス型:アフィリエイト広告
セグメント型:検索連動型広告、行動ターゲティング広告
参考:インターネット広告の規模とその種類
注目されるセグメント型、行動ターゲティング広告
その中で今後、注目されていく一つにセグメント型タイプの行動ターゲティング広告及び発展形のオーディエンスターゲティング広告があります。
というのは技術の進歩により、今まで枠として広告を捉えその枠を購入して不特定多数に出稿していたものが、その先にあるオーディエンスという「人」レベルにまで落とし込みターゲットを絞ることができるようになり、イメージ的には広告枠の購入という段階から広告を見せたい「人」の購入という流れに変わってきたのです。
重要なのはただ単に広く広告を出稿するだけでなく、ターゲットインサイト(消費者の本音、思わず行動を起こしてしまう何か)を導き出し、誰に何を伝えるのかを具体的に設計することです。
インターネット広告の歴史
具体的な話の前に、簡単にインターネット広告の歴史を振り返ってみます。
インターネット広告黎明期は、街中の看板といったリアルな広告媒体と同じように、媒体主の販売する広告枠を広告主が直接購入することで出稿されるという純広と呼ばれる形でした。
その後純広に続き、アドネットワークと呼ばれる新しい形が登場します。アドネットワークを説明する時に分かりやすい例えとしては問屋さんです。
広告枠の問屋さんとしてアドネットワークは多くの媒体の広告枠を管理し、広告主はアドネットワークを通して簡単に様々な場所の広告枠に出稿することができるようになりました。
但し、欠点としてネットワーク単位という広い範囲での購入になるのでターゲティング精度が悪いという問題点を抱えていました。
次にアドネットワークの問題点を解消する形で登場したのが、アドエクスチェンジ(AdExchange)と呼ばれるものです。アドエクスチェンジによりネットワークよりも細かい枠単位での購入が可能になりインプレッションと呼ばれる表示単位での売買も可能になりました。
更に進化を遂げる形で2008年頃登場したのが、「DSP」と「SSP」と呼ばれる広告配信プラットフォームです。
アドネットワークやアドエクスチェンジの登場により広く細かい部分での広告出稿が可能になったわけですが、2008年頃には多くのアドネットワークやアドエクスチェンジが乱立するという事態に至ります。
その結果広告主としてもどの媒体、ネットワークに出稿すればより良い成果が出るのかという広告の最適化という作業を自分達の手でするというのが難しくなってしまいました。
そこで新しく登場してきたのが前述の「DSP」と「SSP」です。
「DSP」は「Demand Side Platform」の略で広告主(購入者)側。広告枠に対して需要があり購入したい側の支援システムのことです。
提供業者によっても異なりますが、予算管理、入稿管理、掲載面の管理、予算やターゲットとするユーザー属性などに基づいた最適な広告枠の選定、あるいは、過去の成果を反映することで行われる配信条件の最適化、といった機能を提供します。自動化することで手間を省けるとともにより効率的な広告出稿を実現します。
主な提供業者:MicroAdBlade、MarketOne、FreakOut等々
「SSP」は「Supply Side Platform」の略で媒体主(売手)側。広告枠を供給できる、売りたい側の支援システムのことです。
媒体主の広告枠の販売や広告収益の最大化などを支援し、提供業者によっても異なりますが、アドネットワークの一元的管理、アドエクスチェンジ、リアルタイム入札(RTB)、などに対応している場合が多いです。
自動化することで手間を省けるとともにより効率的な広告枠提供を実現します。
主な提供業者:YieldOne、AdFunnel、Fluct 等々
また、DSPとSSPを結ぶ仕組みとしてRTB(Real Time Bidding)という広告1インプレッション単位で入札と落札がされるマッチングシステムができます。
RTBシステムにより、統計的に良いユーザーがいそうなところに出すのではなく、欲しいユーザーが来た時だけ、買える価格でユーザーを買うといった広告主の費用と媒体主の収益それぞれの最適化を自動で行えるようになりました。
オーディエンスデータの重要性
このようにインターネット広告の進化により、枠という概念から更に細かいターゲティングをすることで収益最大化を図れるように広告を届ける「人」へと焦点が移っていきます。その中でオーディエンスデータの重要性というものが増してきました。ここで改めてオーディエンスデータとは何かということを整理します。
オーディエンスデータとは、簡単に言うとある人の属性情報と行動ログです。個人そのものを特定するわけではないですが、クッキー(Cookie)という技術を用いて収集したECサイトでの購入履歴や男性女性といったその人の属性データ、ウェブ上での行動履歴などになります。オーディエンスデータを元にしたインターネット広告が、行動ターゲティング広告でありオーディエンスターゲティング広告になります。
参考:オーディエンスデータ
行動ターゲティング広告とオーディエンスターゲティング広告の違い
行動ターゲティング広告とオーディエンスターゲティング広告。似たような形で使われることがありますが、オーディエンスターゲティング広告は行動ターゲティング広告の発展形になります。
行動ターゲティングは一つだけのウェブサイト内での行動履歴により例えば自動車関連のニュースをよくみる人に自動車の広告を表示するといった形になります。オーディエンスターゲティングでは複数のウェブサイトでの行動履歴を活用します。これらの行動履歴を横断的に収集することで例えばパソコン商品を扱っているウェブサイトを訪れた人の行動履歴がクッキーに記録され、次に全くパソコンの情報が載っていない(オーディエンスターゲティングを実施している)料理サイトを訪れた場合でもクッキーなどからパソコン関係の広告を表示することができます。
参考:オーディエンスターゲティングとは
DMP(データマネジメントプラットフォーム)でできること
これらオーディエンスデータを統合的に管理するデータ基盤がDMP(データマネジメントプラットフォーム)となります。
DMPには大きく2種類、パブリックDMP(データセラーDMPとも呼ばれます)とプライベートDMPがあります。用語ばかり出てきて複雑になってきたので広告主から見たDMPとRTB、DSPを絡めて簡単に説明してみます。
各地域で開催されている30代未婚女性をターゲットとした婚活パーティーの広告をバナー出稿する場合
RTBやDMPが無い従来の状態での広告出稿の例としては、
・このサイトの利用者は30代女性が多そうだからこのサイトに広告を出そう。
・このサイトは婚活情報サイトだからここに出そう。
・このサイトは婚活とは関係ないサイトだから出稿はやめよう。
といった形で予想からの出稿であったり、ミスマッチを防ぐためにピンポイントで関連性があるサイトを指定してでの出稿しか難しかったのですが、RTBの発展によって訴求したいユーザーそのものを指定して広告を出稿することができるようになりました。
上記の例でいうと、
・30代女性だけに配信。
・サイト自体は婚活に関係がなくてもその訪問ユーザーが婚活に興味を持っている30代女性であれば配信。
・一度このサイトのこのページを見た人にだけ配信。
といったことが可能になります。そしてそれを可能にするのがDMPと呼ばれるオーディエンスデータベースです。
DMPはDSPやSSPなどの配信システムに付随して利用され、より精度の高い広告のマッチングには欠かせないものです。
DMPにも色々な種類がありますが、一般的にどのようなデータをどの位持っているかで差別化され、広告主には広告配信料+ユーザーデータ量が課金されます。
パブリックDMPとプライベートDMP
DMPにはパブリックDMPとプライベートDMPがあるとご紹介しましたが違いとしては何でしょうか。言葉からもニュアンスが伝わってきますが、違いとしては
パブリックDMPはデモグラフィックデータと呼ばれる、性別、年齢、居住地域、収入、職業、学歴など、その人のもつ人口統計学的属性の外部(サードパーティ)情報を利用するデータベースで、ターゲットユーザーへの効率的な広告配信に利用されます。
一方プライベートDMPは主に3つの役割(蓄積・分類・配信)があります。
ファーストパーティデータと呼ばれるユーザーの自社サイトでの行動情報等を蓄積し、その中でデータを目的別に分類し、そのデータを利用して様々なマーケティング活動に利用するためのデータ集約基盤になります。蓄積するデータはファーストパーティデータだけなく、パブリックDMPと連携したサードパーティーデータやその他POSや販売データベース、顧客データベースなど様々なデータを蓄積することができます。
CRM(顧客管理システム)と近いものがありますが、CRMをリアルな既存顧客のデータベースだとすると、プライベートDMPはデジタルチャネルや潜在的顧客を含めたより広い顧客データベースと捉えることができます。
同じDMPという言葉を使っていますが、パブリックDMPとプライベートDMPは別物と考えても良いかもしれません。
参考:DMPとプライベートDMP
プライベートDMPでできること
ではプライベートDMPを用いるとどういったことができるのか、プライベートDMPの3つの役割(蓄積・分類・配信)を中心に具体的に確認してみます。
例として美容専門学校を想定してみます。この学校は色々なコースがあり中卒者対象のコース、高卒者対象のコース、既に美容室で働いている社会人を対象にしたコースがあります。ウェブサイト上には資料請求フォーム、オープンキャンパスの案内、問い合わせ等のページがあります。またウェブ上での広告だけでなくDM配信や、美容に関する自社アプリ開発なども行っています。
プライベートDMPでできること(蓄積)
プライベートDMPではデータを蓄積することができます。サイト閲覧時のクリックや検索キーワード等の行動データ、会員データ、ソーシャルデータ、広告出稿データ、オープンキャンパスでのアンケートなどから作成したCRM、アクセス解析データ、パブリックDMP等の外部データ等を蓄積統合することができます。
プライベートDMPでできること(分類)
統合したデータを分類し、様々なセグメントを作ることができます。例えば今年度中学卒業予定の女性だけのセグメント、高校卒業予定の男性セグメント、過去に資料請求はしたけどオープンキャンパスには参加したことがないセグメント等
プライベートDMPでできること(配信)
セグメント分けしたターゲットユーザーに対して最適な方法で配信ができます。例えばECショップでのメルマガ配信の場合開封率は全体の3%とも言われていますが、残りの97%にも効果的に配信できます。
配信方法は
他社サイトをよく見ているユーザーにはバナー広告
資料請求や問い合わせをしたユーザーにはメルマガ配信
自社サイトをよく訪れるユーザーにはユーザ毎に最適化されたページの表示
自社アプリを使っているユーザーにはアプリのプッシュ通知
DM(ダイレクトメール) 等多岐に渡ります。
プライベートDMP導入事例
カネボウ化粧品は2014年にフリークアウトが提供するプライベートDMP「MOTHER」を導入しています。これはインティメートマージャーが提供するパブリックDMP「AudienceSearch」と連携させたものでこれによりウェブだけでなくマスを含む広告効果の検証を実現しています。
以下引用
複数のブランドを保有する企業は、各広告施策をブランド毎に個別に実施していることから、自社サイトへ来訪するユーザーのデータを企業内で共有・活用できる資産として蓄積することが難しいという共通の課題を持っていた。また店頭販売が主となるブランドにおけるウェブ広告効果の検証や目的に沿ったウェブ広告施策のプランニングが難しい、といった課題もあった。
この度、カネボウ化粧品が保有する20ブランドを対象にプライベートDMP「MOTHER」を導入することで、自社サイトに来訪するユーザーのデータを企業内で共有・活用できるようになった。これにより、相関性の高いブランド間での送客などデータの有効活用が可能に。加えて各ブランド商品の購入サイクルと各ブランドサイト構造を分析し、自社サイトへの来訪ユーザーを「新規見込ユーザー」「既存顧客ユーザー」「特徴認知ユーザー」の3つのクラスタに分類することで、各クラスタのユーザー数の増減や態度変容を各広告施策の効果検証の指標として活用することが可能となった。
さらに、パブリックDMP「AudienceSearch」と連携させることで、蓄積されたユーザーの属性分析(年齢・性別・年収・家族構成・エリア・業種職種)、検索キーワード分析、リサーチパネルによる分析をシームレスに行える環境を構築し、ウェブだけでなくマスを含む広告効果の検証を実現した。
参考:カネボウ化粧品、20ブランド横断でプライベートDMP「MOTHER」導入
まとめ
DMPやそれに付随するシステムの発展でビックデータの活用の土台はできてきましたが、目標もなくただ定量的に数字だけを分析していても結局何が起こっているのかを正確に把握することは困難です。
「誰に」「何を」「どのような手法で」伝えたいのかを具体的に設計することが大切で、それに対してDMPなどを活用し
検索キーワード等からターゲットインサイト(消費者の本音)を導きだしセグメント化し配信することで新規での優良な見込顧客の発掘(集客)、何かしら接触があった見込み顧客の行動の促進(引き上げ)、既存顧客への更なるアプローチ(ロイヤル化)が可能となります。
また、定性的(数字で表すことのできない)行動分析も有効な手段です。実際にサイトに訪問し、サイトを使用するリアルなユーザーを設定し、その状況を作り出した上で行動を観察します。
その際に思考発話と呼ばれる、使用中に「何を考えているか」を独り言のようにブツブツ喋ってもらうことも効果的です。使用者としてはとりとめないことだと思っていてもそれが重要な気付きにつながりることもあります。
そして行動観察後にはそれぞれのシーンでの行動理由を何故そういった行動をとったかを質問確認しましょう。データでは見つけることが出来なかった問題点や改善点が浮かびあがってくるかもしれません。
定量的データと定性的データを合わせPDCAの改善サイクルをとることにより効果的なコンバージョン(目標)を達成させましょう。
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参考:「枠から人へ」の「人」を深く知るために
参考:DMPには種類がある!あなたがやるべきDMP、教えます。
参考:DMP 入札額を決定するためのデータ解析基盤
参考:5分で完璧に理解できる!DSPの仕組みと新しい手法
参考:DMP勉強会
参考:DMPとDSPの違い
参考:行動観察で分かる! ユーザー行動の「なぜ」